埤雅の研究>釈草篇(3)

【藕】


 『爾雅』に曰く、「其の本は蔤、其の根は藕」(1)と。蓋し茎の下白く、蒻の泥中に在る者は蔤と曰ふ。藕は偶生し、又た善く泥を 耕し、引きて長し。故に藕の文、耦(ⅰ)に从ふ。之に名づけて亦た藕(ⅱ)と曰ふ。今江左、池を穿ちて取り て汲むも、藕を植ふること欲せず。藕の善く泥を 耕し、池を壊すを以てなり。俗に云ふ。藕の生ずるは月に応ず。月に一節を生ず。閏には輒ち一を益す。今芋に十二子有りて衛と為す。里俗に以て月に応ずるの 数と為す。『説文』に曰く、「大葉実根は人を駭かす。故に之を芋と謂ふ」(2)と。旧説に、赤箭根、十二有りて衛と為すこと芋の如 し。風有りて動かず、風 無くして自ら揺る。亦た其の類なり。『趙辟公雑記』に曰く、「藕は能く移り、鯉は能く飛び、亀は能く守る」(3)と。凡そ芙蕖(ⅲ)の 藕を行くは竹の鞭を 行くが如し。節は一葉一華を生ず。華葉は常に偶生す。故に之を藕と謂ふ。又た華初めて子を箸し、首顧下に在り。之を久しくして其の房、倒垂す。首、更に上 に在り。

[校記]

(ⅰ)五雅本、偶に作る。(ⅱ)五雅本、偶に作る。(ⅲ)五雅本、芙蓉に作る。

[注釈]

(1)    『爾雅』釈草。
(2)    『説文解字注』一篇下・艸部・荷の注。芋の字を荷に作る。
(3)    『趙辟公雑記』現存しない。

[考察]

 藕はハスの地下茎である。蔤とは地下茎のうち、葉柄・花柄の出る部分を指しているのであろう。『箋注倭名類聚抄』によると、蔤には「波知須之波 比」、或は「波知須之波比斐」という和名が当てられている。

 ハスの地下茎には空洞があるが、これは浮き袋の役割を果たしている。

 ここではハスの地下茎が広がりやすいことを述べている。秋に収穫し食用とするが、繁殖力の強さから植えたがらなかったというのは本当であろうか。 (野口)


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